はじめに:三つ巴という名の「幻想」
私たちが「三国志」と聞いて思い浮かべるのは、魏・呉・蜀の三つの国が、あたかもジャンケンのように均衡を保ち、天下を争う姿ではないでしょうか? ゲームのマップを見ても、中国大陸は綺麗に三色に塗り分けられています。
しかし、歴史のプロとして断言します。あれは幻想です。
史実(陳寿による正史『三国志』)の世界観を現代風に翻訳するならば、それは「三つ巴の戦い」ではなく、「唯一の超大国・魏に対し、地方の小政権が知恵と地形で必死に抵抗した、敗北必至のドキュメンタリー*です。
今回は、ロマンの皮を剥ぎ取り、残酷な「数字」と「社会システム」から、彼らが直面していた絶望的な格差について解説します。
1. 詰んでいる国力差:魏6・呉3・蜀1の現実
まずは、感情論抜きに「数字」を見てみましょう。 正史三国志および当時の戸籍記録(各国の滅亡時のデータ)から算出した、リアルな国力比較です。